古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

火には火を!

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相武の国造(さがむのくにのみやつこ)の策略により、枯野の真ん中で火矢を放たれたヤマトタケル。たちまちのうちに火は燃え広がる。

ヤマトタケルのまわりは火で取り囲まれ、逃げ道はなくなっていた。

「これまでか・・・」

ヤマトタケルは覚悟を決めた。

 

「・・・昔・・・オオクニヌシの大神は、こんな風にスサノオの大神に火攻めにあわされた時、ネズミに助けられたというが・・・そんな都合のいいことはもうないだろうな・・・」

その時、ヤマトタケルは、ヤマトヒメの言った言葉を思い出した。危険が迫った時はこの袋を開けろと言われた、その袋を・・

 

ヤマトタケルは、ヤマトヒメから手渡された袋を開けた。そこには火打石が入っていた。

 

 

「そうか!」

 

ひらめいたヤマトタケルは、持っていた草薙剣で自分の周りの草を薙ぎ払った。迫りくる火に、防火帯を作って防いだわけだ。しかし、ひとりで薙ぎ払える広さなんてたかが知れている。このままではそのうち迫る猛火に包まれてしまう・・

 

ヤマトタケルは、今度は薙ぎ払った草に、袋から出てきた火打石で火をつけた。小さな火は、少しづつ大きくなりながら、ヤマトタケルのほうから周囲に広がっていく。

 

そして二つの火は合わさり、野原を焼き尽くして鎮火した。

 

さて、相武の国造の屋敷。そこには国造と、従者や親戚の者が集まっていた。

「大和の英雄といったって、ちょろいもんだ。大和を攻める手筈はもう整っている・・・天皇よ、待っておれよ・・・」

国造は上機嫌で酒を飲んでいた。

 

すると、背後から声が聞こえた

「ほう、それは楽しみだな・・・」

 

国造は驚いて振り向く。そこには自分が焼き殺したはずのヤマトタケルが立っていた。

 

「お前!・・・生きてたのか!どうやって・・・」

 

しかし、言い終わらないうちに、ヤマトタケルの剣は国造を一撃で斬り、そこにいた者どももみな斬り殺してしまった。そしてその屋敷に火をつけ、死体ごと焼き払ってしまった。

 

その地を後に焼遺(やきつ)というようになった。

 

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☆焼津

 

焼遺(やきつ)は今の静岡県焼津市と言われています。しかしそこは古事記では「相武の国(さがむのくに)」となっていますが、焼津は駿河の国になります。

これは写本で伝えられるうちに誤記されたとか、いろいろ言われてますが良く分かりません。

 

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草薙剣

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このことから「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」というようになりましたが、古事記ではヤマタノオロチのしっぽから見つかった時から「草那藝之大刀(くさなぎのたち)」と表記されています。


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