東国を平定し、行く先々で歓迎を受けるヤマトタケルだったが、この伊吹山に来たとき、そこの住民から
「この伊吹山の神、好き勝手なことをして我々を苦しめています」
との訴えを受けた。
「よし、ならば、私がその伊吹山の神とやらを退治してやろう」
ヤマトタケルは軽く請け負い、単身伊吹山に登っていった。しかし・・・
ふと不安なものがヤマトタケルの胸をよぎった・・
・・そう、ヤマトヒメから授かった草薙剣を、ミヤズヒメのもとにおいてきてしまったのだ・・・
「なに、剣がなく手も、わたしはヤマトタケルだ。伊吹山の神ぐらい、この手で捕らえてやる!」
それは自分に言い聞かせた言葉だった。
ヤマトタケルはどこからともなく沸き起こる不安を打ち払いながら、伊吹山を登っていった。
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☆伊吹山
滋賀県と岐阜県の県境に位置する標高1377mの山です。近畿と東海の境に位置し、その麓は古代より交通の要所として知られてきました。