ヤマトタケルの自伝 4
わたしは伊勢に来ていた。そして叔母のヤマトヒメを訪ねていった。
ヤマトヒメは伊勢神宮の斎宮としてアマテラス大御神に仕えている。
「伯母上、お久しぶりです」
「あら、オウス!しばらく見ない間に大きくなったわね!元気してた?!」
ヤマトヒメはわたしを歓迎してくれた。神に仕える身として独身を貫かねばならないヤマトヒメは、甥であるわたしをまるで我が子のようにかわいがってくれている。
わたしはヤマトヒメに言った
「伯母上、実は父上から、西国のクマソタケルの兄弟を征伐するよう命令されまして・・・それでこれから九州に行くんです」
「あら、そうだったの・・・それにしても、まだみずらも結っていない稚児姿のオウスにねえ・・・
陛下もまた、無茶をさせるわね・・・」
「いえ、大丈夫ですよ・・・つきましては伯母上、お願いがあるのですが」
「あら、何?私にできることなら何でもしてあげるわ、言ってごらん?」
「はい、実は・・・伯母上のお着物をお借りしたいのですが・・・」
「え?わたしの着物?いいけど・・・なんに使うのか知らないけど、好きなのを持っていきなさい」
「はい、ありがとうございます!」
こうしてわたしはヤマトヒメの着物を借りると、それをもって九州への旅路に着いたのだった。
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☆ヤマトヒメ
ヤマトヒメは前章の垂仁天皇の物語において、伊勢神宮を創設しアマテラスを祀りました。
ヤマトタケルの物語では、彼の活躍を後ろから支える重要な役回りを演じています。
また、神に仕える女性ということから、邪馬台国の卑弥呼に比定されることもあります。
ヤマトヒメは皇大神宮(伊勢神宮内宮)別宮の倭姫宮に祀られています。近くの尾上御陵(宇治山田陵墓参考地)がヤマトヒメの墓とされています。
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