ヤマトタケルは、再び伊勢のヤマトヒメのもとに来ていた。
「叔母上・・・」
「あら、オウス・・・今はヤマトタケルだったわね。西国を平定したっていうじゃない、よく頑張ったわねー!」
ヤマトヒメは喜び一杯の顔でヤマトタケルを歓迎した。
しかしヤマトタケルは、母親のごとく慕っているヤマトヒメを見るなり、泣き出してしまった。
「ああ、叔母上・・・」
「ちょっと、どうしたの」
「叔母上・・・父の天皇は、私を死ねばいいと思ってるのでしょうか・・・」
「え?どういうこと?」
「私は天皇の命を受けて、西国の悪人どもを征伐し朝廷のもとに平定して、帰ってまいりました。しかしまだそれから時も立っていないのに、今度は東国の征伐を命じられたんです・・・
・・・それも、軍勢もつけず・・・与えてくれたのは一人の従者と、ヒイラギの矛だけ・・・こんなのが何の役に立つんだ・・・
・・ああ、父上はやっぱり、私を死ねばいいと思っているんだ・・・」
ヤマトタケルはヤマトヒメの前でいつまでも泣いていた。
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☆倭建命と日本武尊
どちらも「ヤマトタケルのみこと」ですが、前者は古事記、後者は日本書紀での表記です。漢字だけでなく、この両者のキャラクターは大分違ってきてます。
古事記の「倭建命」は兄オウスを無残に殺して父の天皇から嫌われました。熊襲征伐から帰ってはじめてそのことに気づき、叔母のヤマトヒメのもとで泣きごとを言う。まことに人間味あふれる書き方をされています。
一方日本書紀の「日本武尊」は完全無欠の、非の打ち所のない英雄。天皇からの信頼も厚く、あくまでも天皇に忠誠を誓うヒーローとして描かれています。
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