また、天皇はその治世、様々な出来事において神を祀る重要さを感じていた。
先帝である父の崇神天皇は、オオモノヌシの神を祀って疫病をしずめた。それ以来、世の平安を神に祈る重要さを感じ取り、何かにつけて天地の神をよく祀っていたのである。
そんな父を見ながら天皇は育っていった。そして自身が天皇になり、サホビコの反乱がおこり、息子ホムチワケが神祟により口がきけなくなったことを通じて、神を祀ることの重要さを日々感じていたのである。
そんな天皇の祖先神・アマテラスは、崇神天皇の娘、すなわち天皇の異母妹のトヨスキイリビメによって祀られていた。しかしその時、きちんとした社もなく、日本の国の祖先神にふさわしく祀られているとはいいがたかった。
天皇はアマテラスを日本の国の神として盛大に、荘厳に祀りたいと考えたのである。
まず天皇はアマテラスの祭祀を執り行うものをトヨスキイリビメから自分の娘のヤマトヒメに交代させた。そしてアマテラスを祀るにふさわしい地をヤマトヒメに探させたのである。
ヤマトヒメはアマテラスの御霊(みたま)とともに、大御神が鎮まるのにふさわしい地を訪ね歩いた。菟田の筱幡(うだのささはた)から近江、美濃とめぐって伊勢の地に来たときだった。
ヤマトヒメの心の中に、凛とした荘厳な声が響いた。
「神風のそよぐ伊勢の地は、常世からの波も打ち寄せ、倭(やまと)からも程よい近さで良い国だ。わたしはこの地に鎮まりたいと思う」
それはアマテラスからのお告げであった。
早速その地、伊勢の五十鈴川のほとりに社を立て、そこにアマテラスを祀ることにした。
こうして伊勢の地に鎮まったアマテラスは、その後日本の国の祖神として人々の信仰を集めることとなった。
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☆伊勢神宮
伊勢神宮の起源にかかわるこの物語も日本書紀をもとに構成しました。古事記にはトヨスキイリビメとヤマトヒメのそれぞれに脚注として「伊勢の大神を祀る役についた」と簡単に書いてあるだけです。
伊勢神宮の祭祀を務めることになったヤマトヒメは、この後ヤマトタケルの物語で重要な役目を務めます
伊勢神宮内宮 正宮(フリー写真サイト 街画ガイドより)
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