古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

サホビメ奪還なるか?

野見宿祢の自伝 9

 

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サホビコの屋敷の扉が開いて、サホビメさまが出てきた。赤子を抱いている。

 

サホビメさまは仰せになる。

「陛下・・・陛下の御子でございます。どうぞ、お引き取りくださいませ」

 

そこで、陛下は選抜した兵士に「行け!」と命令される。

この兵士らはあらかじめ力が強く動きも俊敏なものを選抜しておいたもので、御子だけでなくサホビメさまも力づくで連れてくるように陛下から命令されていた。

 

兵士らはゆっくりとサホビメさまに近づいていく。

 

兵士らがサホビメさまの前まで来ると、サホビメさまは抱いていた御子をそっと差し出し、一人の兵士が御子を受け取った。

サホビメは御子を引き渡すと、振り向いて屋敷に戻ろうとされた。

 

その時

 

兵士たちは陛下の命令通り、サホビメさまにつかみかかる。サホビメさまを陛下のもとに連れ戻すために。

 

・・・しかし・・・

 

兵士がサホビメさまのの長い髪につかみかかると、サホビメさまのの髪は頭からごっそり抜け落ちてしまった!!

 

兵士らは慌ててサホビメさまの腕をつかむ!しかし腕に巻いていた玉飾りの紐がちぎれ、玉が地面に散らばる。サホビメさまの腕はつかんだ兵士の手からすっぽ抜けた!

 

兵士らは急いでサホビメさまの服をつかむが、つかんだ先から服はびりびりとやぶけてちぎれていった・・・

 

そのすきにサホビメさまは屋敷の門の中に駆け込んでいった。

兵士らは仕方なく、御子だけを抱いて陛下のもとに戻ってきた。

 

「あ・・・あああ・・・・」

この様子を見ていた陛下は、嘆きとも落胆とも言えないうめき声を漏らす・・・

サホビメさまを奪還する策略は失敗してしまったのだ・・・

 

おそらくサホビメさまは、陛下の考えを見抜いていたのだろう。それであらかじめ髪を切ってカツラを作って頭にかぶり、玉の紐も切れやすいように細工して幾重にも腕に巻き、さらに衣服も酒に浸して腐らせておいたに違いない・・・

サホビメさまが陛下よりも一歩上手を行っていたようだ・・・。

 

後の話になるが、陛下はこの時サホビメの玉に細工をした職人の領地を没収してしまったのだった。

 

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野見宿祢の自伝 目次

 

 

☆地得ぬ玉作り

 

玉を細工した職人を逆恨みして領地を没収してしまった天皇。ただサホビメからの依頼を受けただけの職人にとってはいい迷惑ですが・・・

 

古事記にはこのことからことわざに「地得ぬ玉作り」(ところえぬたまつくり)というようになった、と記してあります。

今はこのようなことわざは伝わってはいませんが、目先の利益にとらわれて大事なものをなくしてしまう、といった感じの意味でしょうか。

 

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