野見宿祢の自伝 8
皇軍はサホビコの屋敷を取り囲んだが、それ以上動けず膠着状態に陥っていた。屋敷の中には陛下が寵愛するサホビメさまがおり、サホビメさまは陛下の御子を懐妊している。うかつには踏み込めない。
そのまま時だけが過ぎた。
そんな時、サホビコの屋敷から使者がやってきた。
使者が言うには、サホビメさまは出産されたそうだ。男の子、皇子だという。
「そうか・・・余の子が生まれたのか・・・」
陛下は難しい顔をして、つぶやくように仰せになった。
使者は続けて口上を述べる。
「サホビメさまは、御子を天皇の皇子としてお認めになるのならば、引き取って天皇陛下のもとで養育してほしいと仰せになっております。
いかがいたしましょうか」
陛下はすぐにお答えになった。
「余の子とあれば、余のもとで育てるのは当然だ。その子は余が引き取る。
ただし、引き渡しの時は、サホビメ自らその子を抱いて屋敷の外に出てきてほしい。そのように伝えてくれ」
「はい、かしこました」
使者はサホビコの屋敷に戻っていった。
使者が返った後、陛下は仰せになられた。
「兄のサホビコを許すわけにはいかないが、サホビメが余の后になって3年、余が后を愛する気持ちに変わりはない・・・
ノミ、兵士の中から、力が強く動きが俊敏なものを選んで連れてきてくれ!」
こう言われたわたしは、命令通り力が強く、動きが俊敏な兵士を数人えらんで陛下の御前に連れてきた。
陛下はその兵士らに向かって仰せになった。
「サホビメが子を抱いて屋敷の外に出てきたら、子だけでなく母のサホビメも一緒に連れてこい!
髪をつかんでも、腕を引っ張っても構わん!とにかく力づくでも母子一緒に連れてくるんだ!!」
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