イワレの一行は宇陀の地についた。そこを支配しているのはエウカシとオトウカシの兄弟だった。
一行についてきた熊野の国つ神たちによると、この兄弟は宇陀の地を独占的に支配しており、他者の干渉を大変嫌うらしい。そこでまず、八咫烏を使いにやることにした。
八咫烏は2人の屋敷まで飛んできた。八咫烏は屋敷の屋根にとまり、クワアー、クワア―と大きな声で鳴く。
何事かと二人が庭に出てみると、
「いま、この地に天の御子がおいでになっています。そなたらは天の御子にお仕えする気はありますか?」
八咫烏は2人に問いかける。
しかしこれを聞いた兄のエウカシは、すぐに鏑矢を射って八咫烏を追い返した。八咫烏は急いでイワレの陣地に引き返していった。
八咫烏から話を聞いたイワレは
「・・・そうか・・・仕方ない。ならば軍勢をもって攻めるしかないな・・」
直ちにイワレは戦いの準備を進めた。
その時だった。一人の使者がやってきた。エウカシ・オトウカシの兄弟からだった。
「先ほどは大変失礼いたしました。カラスが言葉をしゃべったのでびっくりし、慌てて見境もなく矢を射って追い返してしまったのです。あとから事の重大さに気づきました。天の御子からの使いに対し、大変な御無礼をはたらき申し訳ありません。
天の御子には使え奉ります。そのしるしとして天の御子のための殿を建て、饗宴の準備をいたしております。どうぞ我々の屋敷においでくださいませ」
それを聞き、イワレは安心しながらも、本当に信用してよいのか不安も感じた。しかしともかくも二人の歓迎を受けることにした。
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