話を聞いたイワレは、何とも言いようのない不思議な気持ちだった。
「・・・そうか・・・タカクラジ、ありがとう。アマテラス大御神など遠い昔のことだと思っていたが、ちゃんと我々を見守ってくださっていたんだな・・・」
タカクラジは続けて言った。
「イワレさま、それからもう一つ、夢の中でタカミムスビの神様がおっしゃいました。
天の御子はこの先急いで進んではなりません。荒々しく良くない神がこの先沢山待ち構えております。なのでこれから八咫烏(やたからす)を遣わすそうです。八咫烏が先導するので、そのあとについていくようにとの仰せです」
ほどなく八咫烏は降りてきた。イワレの一行は八咫烏の後についていった。
そして吉野川の際下流に来たとき、そこでわなを使って魚を取っている人がいた。イワレは興味を持ち、彼に名を訪ねてみた。「私はこの国の神で、ニエモツと申します」と言った。
彼はイワレに従順した。
また、その先、井戸から不思議なひとが現れた。
「なんだ?あいつ、尾が生えて光ってるぞ!」
ただよく見ると、彼は裾の長い毛皮を着ていてそれが尾のように見えていた。毛並みが美しく、陽が反射して光ってるように見えたのだった。彼は
「私は国つ神のイイカと申します」と名乗った。彼もイワレに従順した。
一行はさらに山道を進む。
また毛皮を尾のように垂らした人が岩の陰から現れた。
「私はイワオシワケと申します。天の御子がおいでになったと聞き、お迎えに上がりました」
こうして八咫烏の導きでイワレは次々と味方を増やしながら、土地の事情に詳しい彼らの案内で道の無い山を分けながら進んでいき、宇陀までやってきた。
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日本サッカーのシンボルともなっている八咫烏。イワレを大和まで導いた後、熊野に戻り石になったと言います。熊野那智大社にある「烏石」がそれだそうです。