こちらは因幡の国。
オオアナムヂの異母兄たちは、先を争うようにしてヤガミヒメに求婚した。
しかし、うさぎの言う通り成功しない。
その異母兄たちの一人がヤガミヒメに聞いた。
「姫様、なぜ我々の誰とも結婚しないのですか。我々はみんな、英雄スサノオの血を引く者。結婚して出雲にくれば、支配者の妻として何不自由ない暮らしが待っているのですぞ!」
ヤガミヒメははっきり答えた
「あなたたちのそういうところが私は嫌いなのです。あなたたちがスサノオの子孫であることを鼻にかけて出雲の国ではわがまま乱暴のし放題、民が困っているという噂は因幡まで届いております。それに・・・」
ヤガミヒメは一息つく。
「同じスサノオの子孫でも、オオアナムヂさまは全く逆の話が伝わってきております。オオアナムヂさまは慈悲深く、困った人を見ると助けずにはおれない性分だと聞いております。わたしは嫁に行くなら、オオアナムヂ様のところに行きとうございます。」
彼はこの話を兄弟たちに聞かせた。兄弟たちは口々に怒りの言葉を繰りにした。しかし、その怒りはヤガミヒメではなく、オオアナムヂに向けられたものだった。
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☆売沼神社
因幡の国、現在の鳥取県鳥取市にある、ヤガミヒメを祀る神社です。ヤガミヒメの出生地と言われています。「めぬまじんじゃ」と読みますが、もともとは「比売沼(ひめぬま)」だったのが後世「比」が脱落したと言われています。