さて、わたしはいずれ日本全国の支配を画策していたが、まずは足元、出雲をかためなければならない。
そのころは出雲の国にも統一した政体はなく、各地域で豪族が覇を争っている状態であった。
そんな中、わたしは各地の豪族を次々と従えていった。
武力で制圧させた部族もあった。その一方で、部族の娘を嫁に迎え、親戚関係となることで平和裏に同盟を結ぶこともあった。
そう、古代の支配者は複数の妻を持つことが普通だったが、その裏にはこうした政略的な意味もあったのである。
こうやってまず出雲の足固めを行った後、周辺国に支配を伸ばしていった。
そうしてわたしが支配下に置いた部族のひとつに、因幡のヤガミ一族があった。ヤガミ・・・読者の皆様はこの名を覚えているだろうか
そう、最初に異母兄のお供をしていった、あのヤガミヒメの里である。白うさぎの導きで、わたしはヤガミヒメとも結ばれる運命にあったのだ。
この件があったので、ヤガミの一族との話し合いは非常にうまくいった。わたしはヤガミヒメを嫁に迎え、ヤガミの地は私の支配下に入ったのである。
しかし・・・そのあとがまずかった・・・
わたしは白うさぎの一件があったので、ヤガミヒメは他の嫁とは違って特別待遇で迎え入れた。私が寝起きしている、出雲の宇迦山の屋敷に迎えたのである。
しかし、これが裏目に出てしまった・・
わたしの正妻のスセリヒメの嫉妬を呼んでしまったのである・・・
スセリヒメは意外に嫉妬深い女神だった・・・わたしがヤガミヒメを迎え入れたことで、怒り狂ってしまった・・
それはそうだろう、これが女として、妻として、面白いはずがない。
しかし、まだ若かったわたしは、そこまで考えは及ばなかった。
・・屋敷の使用人は、正妻のスセリヒメには逆らえない。
ヤガミヒメは次第に居場所を無くしていった・・・私がヤガミヒメをかばえばスセリヒメが怒る・・・
そしてついには、ヤガミヒメは生まれた子を木の股に残して、因幡に帰ってしまったのであった・・・
≪生まれた子を抱くヤガミヒメ≫
幸い、その後もヤガミ一族との関係が悪くなることは無かったが・・
わたしにとって痛恨の出来事であった。
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☆御井神社
・・・これが「因幡の白うさぎ」の話の結末です。今では「縁結びの神様」として祀られているオオクニヌシなんですが・・・日本の神様なんて、こんなもんなんですね・・・
この時産まれた「木俣神」は、島根県出雲市の御井神社に祭られています。近くには木俣の神が産湯を使ったという三つの井戸も残されています。
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