オオアナムヂは元に戻ったうさぎを見て、笑顔で言った
「良かったね、きれいにけがは治ったよ」
「ありがとうございました。あのう・・・ところであなた様、もしかして、オオアナムヂさまではありませんか?」
「え?そうだけど、うさぎくん。どうして知ってるの?」
「それはもう、オオアナムヂさまのお噂は隠岐の島まで聞こえてきております。伝説の英雄スサノオの直系という尊いお血筋ながら、まったく威張ったところはなく、お優しくて慈悲深くて、とても知恵のあるお方だと・・・私をやさしく助けてくれた時、これはオオアナムヂさまに違いないと思いました」
「ハハハ・・・よしてくれよ、うさぎくん。ぼくはただの、兄さんたちの荷物もちさ。ヤガミヒメさまに求婚に行く兄さんたちのお供をしてるんだ。あんまりおくれるとまた怒られるから、じゃ、いくよ」
「オオアナムヂさま、ヤガミヒメさまはお兄様方の誰とも結婚することは無いでしょう。袋を担いでいても、きっとヤガミヒメさまはオオアナムヂさまを気に入られます」
前<<< 白うさぎに戻る - 古事記の話
次>>> 異母兄たちの求婚 - 古事記の話
☆白兎神社
この話の舞台になったのが、現在の鳥取県鳥取市の白兎海岸です。近くには兎神を祀る「白兎神社」や、うさぎが潮を洗い流したという「御身洗(みたらし)の池」があります。