オオアナムヂの異母兄たちははかりごとをした。よからぬはかりごとである。もちろん、オオアナムヂを陥れようとする策略を練ったのである。
そして、オオアナムヂを誘い出す。
「おい、オオアナムヂ!」
「あれ?兄さん、どうしたんですか?こんな朝早くから」
「今からイノシシ狩りに行くんだ、お前もついてこい!」
「はい」
オオアナムヂは異母兄の策略などみじんも疑うことなく、異母兄たちに続いて伯耆の国、手間の山に来ていた。
「オオアナムヂ、この山には赤いイノシシがいるそうだ」
「へえ、赤いイノシシ、それは珍しいですね」
「俺たちがその赤いイノシシを山から追い立てるから、お前はふもとでとらえるんだ」
「え・・・ぼく一人で?兄さん、でもそれはちょっと、私には・・・」
「うるさい、お前がやるんだ!」
そういって異母兄たちは山の中に入っていった。仕方なくオオナムヂはふもとで待っていた。
そのころ、別の異母兄たちは、山の上で大きな岩を火にくべていた。岩は火に熱せられて真っ赤になっていた。
そこに、オオナムヂを誘い出した異母兄たちが戻ってきた。
「おい、オオアナムヂを誘い出してきたぞ、いまだ!」
「よし、落とすぞ」
異母兄たちは真っ赤に焼けた石を、ふもとのオオナムヂめがけて転がした。
「おーい!オオナムヂ!そっちに行ったぞ、捕まえろー!」
オオナムヂは異母兄たちの策略にはまっていた。自分めがけて転がってくる焼けた大岩を、異母兄たちが追い立てた赤いイノシシと信じて疑いもしない。
オオナムヂは両足を踏ん張り、両腕を開き、正面から受け止めた・・・
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・・・・即死だった。
オオナアムヂは岩の下敷きになり、全身を焼かれ、声を上げる暇もなくこと切れてしまった。
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☆赤猪岩神社
鳥取県西伯郡南部町にある赤猪岩神社(あかいわじんじゃ)の境内には、オオアナムヂが受け止めたという大岩が祀られています。