古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

黄泉の宮殿に入る

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イザナミは戸の奥に下がっていったようだった。再び黄泉の宮殿を不気味な静寂が包んだ。

 

私は待った。どれくらい待っただろうか・・

暗い黄泉の世界では、時の流れが全く分からない。

 

一昼夜か、それとも二昼夜は立っただろうか・・なかなか出てこぬイザナミに私は焦りを感じていた。

黄泉の王との話し合いがなかなかうまくいかないのか・・・

 

「ああ、もう待てん!この手でイザナミを救い出してやる!」

しびれを切らしたわたしは立ち上がった。

 

宮殿の戸に近づくと、わたしは戸を思い切り蹴飛ばした。

 

頑丈に見えた戸だったが、木が腐っていたのだろうか、思いのほか簡単に蹴破ることができた。

わたしは宮殿の中に入る。

 

一歩入ると、そこは一点の光もない真っ暗な世界だった。ひんやりとして冷たい空気だった。しかしその冷たささわやかさは全く感じない。感じたのは異様な不気味さだけだった。

 

とにかく真っ暗で何も見えない。わたしは髪に差していた櫛を外し、その歯を一本おった。そこに火をともす。

こうして明るい松明を得たわたしは、宮殿の奥のほうに進んでいった。

 

 

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 ≪黄泉の宮殿の描写は古墳の石室内部を表すともいわれる≫

 

どれくらい進んだろうか・・・横たわっている人影が松明に照らされた。

 

私はすぐに分かった、あれがイザナミだと・・

「おお、イザナミ!迎えに来たぞ!いったいどうしたというのだ!」

 

わたしは何か異様なものを感じながらも、イザナミに会えた喜びがそれを抑えていた。私は小走りでイザナミのもとに駆け寄った・・・

 

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