古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

スサノオ、泣きわめく

f:id:karibatakurou:20190703052520p:plain

 

数年の時が経った。

 

アマテラスとツクヨミは父神の指示通り、それざれの世界を統治している。

しかし、スサノオだけは海に行くことは無かった。いつまでも泣いていた。それも、尋常でない大きな声で泣き叫んでいるのである。

 

スサノオはもともと武勇の神である。それが大声で泣くのであるから、山も緑も枯れ、川も海も水が干上がってしまう。それだけではない、その声に邪神が引き寄せられ、民は疫病に、干ばつに苦しむようになっていった。

 

そのうち海に行くだろう、と見守っていた父神イザナギも、もはや我慢ができなくなっていた。

 

スサノオ、お前どうして泣いてばかりいるのだ?なぜ海を治めに行かない?」

イザナギスサノオに向かって言った。

 

「お父様、オレはお母様に会いたい。お母様がいる根の国に行きたいんだ」

「なに?・・・」

意外な答えに、イザナギの表情が曇る。しかし、続けていった。

「だめだ、イザナミはもう死んだんだ。現世の神は死の世界に行くことはできない。それぐらい、わかるだろう?」

「いやだ、お母様のところに行く!」

 

ここにきて、イザナギは堪忍袋の緒が切れてしまった。

 

「だったら、どこへでも行くがいい。とにかくここには居るな!」

 

ついにイザナギスサノオを勘当してしまった。

 

ここにイザナギは自分の力の限界を感じた。それにイザナギイザナミで協力して産み、育てた日本の国は、これも二人で産んだ八百万の神々の下で繫栄している。

「もう潮時だ。あとは子供たちに任せて隠居しよう」

イザナギは近江の多賀に行き、そこでイザナミを弔いながら静かに過ごしたという。

 

前<<<  三貴神の誕生

次>>>  スサノオ、天に昇る

 

古事記の話 目次

 

 

多賀大社

 

f:id:karibatakurou:20191001053911j:plain

 

古事記ではイザナギの記述の最後は「イザナギの大神は淡海(おうみ)の多賀に鎮座されている」と結ばれています。現在の滋賀県犬上郡多賀の多賀大社とされています。

一方、日本書紀には「幽宮(かくれみや)を淡路の国に造り静かにお隠れになった」というのがイザナギに関する最後の記述です。古事記の「淡海」は「淡路」の誤記ではないかという説もあります。

 

karibaryokouki.hatenablog.com

 

≪リンク≫

 

カリバ旅行記
温泉の話
駅弁の話