神功皇后の自伝 2
その年、夫の天皇とわたしは、大和から遠く離れた筑紫の詞志比宮に来ていた。先述の通り、朝廷に反乱を起こした熊襲を討つためである。
大和から詞志比宮についたその夜のことである。
その日、臣下の間で不穏な空気が漂っていた。というのは、その日の夜、空に大量の流星が見えていたのである。
≪画像は写真ACより≫
流星は古来より不吉の象徴とされている。それがこれだけ大量に流れるということは・・・臣下のものが不安に思うのも無理はない。まさか、熊襲征伐に敗退するようなことがあれば・・・
そこで、夫の天皇は熊襲征伐の成否を占うことにし、わたしに神の降臨を命じた。
実は、わたしは巫女として神を自らの身体に降臨させ、神の言葉を伝える能力があったのである。
その夜、詞志比宮の神庭では、大きなかがり火がたかれていた。
わたしはそのかがり火の前に立つと、そっと手を合わせた。のりとを唱え、一心不乱に祈りをささげる。
少し離れたところでは、夫の天皇が神琴を弾いていた。そのそばには重臣の建内宿祢(たけうちのすくね)が控えている。
闇の中で浮かび上がる火に、荘厳な琴の音・・・詞志比宮の神庭は、神秘的な雰囲気に包まれていた。
その時、わたしは意識を失った!
・・・そのあとのことは、覚えていない・・・
・・・・・・
・・・
「オキナガタラシヒメさま!オキナガタラシヒメさま!」
わたしは重臣の建内宿祢(たけうちすくね)が呼びかける声で目が覚めた・・
・・・
どうやら私には神が降臨したらしい。降臨した神は、わたしの口を借りて神告をつたえる。その間わたしは気を失っており、その間のことは全く覚えていない。
これ自体はいつものことである。
しかし、今日は、何故か周囲が騒がしい・・・あたりを見ると、従者らが右往左往して叫びながら走り回っている・・・ただ事ではないのは明らかだ・・・
その時、建内宿祢は衝撃的な事実を私に告げた
「オキナガタラシヒメさま・・・陛下が・・・天皇陛下が・・・崩御されました!!」
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☆詞志比宮
流星云々というのはぼくの下手な創作であり、記紀にはこのような記述はありません。
神功皇后が占いを行い、仲哀天皇が崩御された筑紫詞志比宮(つくしのかしいのみや)。
現在の福岡市東区香椎にあります香椎宮(かしいぐう)とされています。
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