神武天皇の自伝 番外編 3 (カムヤイミミの自伝)
母は帰っていった。後に我々3兄弟が残された。
わたしたちは張り詰めた顔で互いを見合わせていた。
最初に口を開いたのは兄ヒコヤイだった
「やばいぞ・・・このままぐずぐずしてたらタギシミミに殺される・・・」
わたしは答えていった
「兄上、ならば先手を打って、こちらからタギシミミを討ってやりましょう!」
「そうです!それしか手はありません!」
弟のカムヌナカワミミも賛成した。
ところが兄ヒコヤイは・・・
「冗談じゃない、そんな恐ろしいこと・・・わたしはそこまでして天皇(すめらみこと)の地位などいらん。そんなん、タギシミミにでもお前たちにでもくれてやるわ」
そういって、宮から出て行ってしまった。
わたしは
「あ、兄上・・・お待ちを・・・」
と引き留めようとしたが、無駄だった。
弟のカムヌナカワミミが言う。
「仕方ありません、ヒコヤイの兄上は昔から臆病な性格でしたからね・・・いざことを構えると怖くなっておじけづいたんでしょう。
かくなる上は、わたしとカムヤイミミの兄上とで、タギシミミを打ち取りましょう」
「そうだな・・・よし、やるなら早いほうがいいな」
「いつ、どのようにされますか?」
「今夜だ!タギシミミのもとに行き、寝ているすきを襲ってタギシミミを討つ」
「そうですね、ぬかりなくやりましょう!」
こうしてその日の深夜、わたしと弟のカムヌナカワミミは白檮原宮(かしはらのみや)に忍び込み、タギシミミを討つべく機を狙っていた。
前<<< 風が吹き来る、木の葉が騒ぐ - 古事記の話 (hatenablog.com)
次>>> 二代目天皇の即位 - 古事記の話 (hatenablog.com)
☆長男ヒコヤイ
古事記では、母イスケヨリヒメの歌を聞いた時点では3兄弟がそろっていましたが、何故かタギシミミを討ちに行く場面では長男ヒコヤイはいなくなっています。その理由は説明がありません。
日本書紀では最初から存在せず、カムヤイミミ(日本書記での名はカムヤイ)とカムヌナカワミミの2兄弟となっています。
ヒコヤイは熊本県阿蘇郡高森町の草部吉見神社で主祭神として祀られています。
≪古事記関連の姉妹サイト≫
小説古事記
古事記ゆかりの地を訪ねて
≪その他の姉妹サイト≫