神武天皇の自伝 34
わたしはオオクメに連れられて高佐士野まで来ていた。
そこに7人の娘が連れ立って歩いてくるのが見えた。
オオクメが言った
「イワレさま、あそこに7人連れ立ってくる娘のひとりがイスケヨリヒメです。誰かわかりますか?」
わたしは7人の娘をよく見てみた・・・
・・・どの娘も美しいが、先頭に立って歩いている娘・・・ひときわ輝くように美しい。いや、美しいだけではない・・・神々しさを感じるのだ・・・
・・・この娘がオオモノヌシとセヤダタラヒメの子、イスケヨリヒメに違いない・・・
そう直感したわたしは
「先頭に立っている娘じゃないか?」
とオオクメに伝えた。
「さすがイワレさま、天皇(すめらみこと)になっただけのことはありますね。その通りです」
そう言われたわたしは、オオクメに
「ではオオクメ、あの娘に、わたしの后になってくれるよう、頼んできてくれないか」
「ええ・・・わたくしがですか・・・イワレさまが直接伝えたほうがいいのではないですか?
ご先祖の天孫二ニギもコノハナサクヤヒメに直接その思いを伝えたといいますよ・・」
「そういわずに・・・なあ、頼むよ、オオクメ!」
そういわれて、オオクメは娘たちのもとに歩いて行った。その表情には、『やれやれ・・・なんで自分が・・・』という感情が現れていた。
いや、何も自分で行くのにしり込みしたとか、人に押し付けて自分は楽しようとか、そういうことでオオクメに行かせたのではない。
イスケヨリヒメが本当に神の御子なのか、確かめたかったのだ。
オオクメは代々続く根っからの武人だ。武人のあかしとして顔に刺青を入れている。目の周りには相手を威嚇するような黒い輪の墨を入れていて、その顔を見たものは皆震えあがってしまうような恐ろしさだ。
そんなオオクメを見て神の御子という娘がどう反応するのか、確かめたかったのだ。
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☆高佐士野
神武天皇となったイワレがイヨリヒメと出会った高佐士野。大神神社の近くを流れる狭井川周辺の台地とされています。
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