オモイカネの自伝 30
サルタビコを伊勢まで送り届けたウズメが戻ってきました。
「ウズメ、ご苦労だった」
ニニギさまが仰せになります。
ニニギさまのおそばに控えていたわたくしは
「ウズメ、道中、変わったことは無かったか?」
と声をかけました。
すると、ウズメは
「はい、サルタビコ殿を伊勢にお送りした、帰り道のことでございますが・・・」
と、旅の途中の出来事を語り始めました。
ウズメは海に出て、海の魚を大小問わず、ことごとくすべて集めたそうです。そして魚たちに向かって
「高天原から天の御子が高千穂に降臨された。お前ら、天の御子にお仕えするか?」
と、問うたそうです。
魚たちは口々に「お仕えいたします」と答えました。しかしその中に、一匹だけ、何も言わないものがあったそうです・・・ナマコでした。
ウズメはナマコをつかむと
「お前、なぜ答えない?さてはこの口、ものを言えぬ口だな!!」
そういうと、小刀でナマコの口を切り裂いてしまったとのことでありました。
ニニギさまも、わたくしも、唖然としてしまいました。
男勝りで、思ったことをすぐ行動に移す、直情型のウズメらしいのですが、それにしても・・・
ウズメが下がった後、ニニギさまはわたくしに問いかけました
「オモイカネ・・・ナマコはこの後、どうなると思う?」
わたくしは
「さあ・・・おそらく未来永劫、ナマコは裂けた口のまま、生きていかなければならないのではないでしょうか・・・」
と、お答え申し上げたのでした。
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☆魚
現在、水中を泳ぎ鰓呼吸する脊椎動物を「魚」と書いて「さかな」と読んでいます。
しかし、もともとの日本語ではこれを「うを」と言っていました。「トビウオ」などの種名や「魚市場(うおいちば)」などの語句にその名残を残しています。
「さかな」とはもともとは「酒菜」の意味。すなわち酒と一緒に食べる料理を「さかな」と言ってました。
酒席に供されるのは魚介類が多かったことから、江戸時代のころから魚介類そのものを「さかな」というようになりました。
(画像はぱくたそより)
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