シタテルヒメは、凛々しい若者を連れてきた。彼は、高天原から来たワカヒコだと名乗った。
私はふたりを見てすぐにわかった。シタテルヒメとワカヒコが恋に落ちていると・・
わたしはワカヒコに向かって言った。
「ワカヒコ・・・お前も高天原からの使者か・・?」
かまをかけてみたのである。
しかし、ワカヒコはそれを、思いのほか素直に認めてしまった。
「はい、オオクニヌシさま、その通りです。日本の国をアマテラス大御神に譲っていただくべく、交渉役として降りてきました」
「・・・そうか・・・・」
わたしはため息をついていった。しかし、ワカヒコは言葉をつづける。
「ですが・・
オオクニヌシさま、今のわたくしは、そのような考えは持っておりません。
お嬢様のシタテルヒメ様に偶然お会いし、わたくしはぜひ、シタテルヒメさまと結婚したいと思いました。今はこの豊かな日本の国で、シタテルヒメさまと一緒にいつまでも暮らしていきたいと思っています。
オオクニヌシさま、どうか、シタテルヒメさまとの結婚をお許しください」
わたしはじっとワカヒコの眼を見つめた。その真剣なまなざしは、うそ偽りを行っているようには見えなかった。
もしかしたら娘婿の立場を利用して、日本の支配を画策しようという魂胆はあるかもしれない。しかしそれにしても、シタテルヒメと結婚して日本で暮らしたいという気持ちは本物のようだ。
わたしはふたりの結婚を許した。ふたりとも大喜びだった。
ふたりは新居を建て、そこで仲睦まじく過ごしていた。
そして8年の歳月がたった。
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