古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

ワカヒコの死

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高天原からワカヒコが降りて来て、シタテルヒメと結婚してから8年がたった、ある日のことである。

 

わたしが住む出雲の宮殿に、女性の泣く声が聞こえてきた。これは・・・

シタテルヒメの泣き声だ。間違いない。

 

シタテルヒメとワカヒコが暮らす屋敷は、わたしの宮殿とは相当離れている。普通なら声など聞こえてこない。

 これは何かあったな・・・

 

わたしは直ちに二人の屋敷に駆け付けた。すると・・・

 

そこには矢が刺さって死んでいるワカヒコがいたのである!

その傍らでシタテルヒメが泣いていたのだ・・・

 

 わたしは泣きじゃくるシタテルヒメをなだめて、事情を聴いた。

 

その日、ワカヒコは、屋敷に飛んできてうるさく啼く雉(キジ)を矢で射った。するとその矢は雉を貫いて遠くまで飛んでいき、そして戻ってきてワカヒコに刺さったというのである。

 

 にわかには信じられなかった。一度射った矢が、戻ってきて射手に突き刺さる、なんてことがあるだろうか・・・考えられない。

 

後から分かったことだが・・・

 

実はこの雉は、高天原からの使いだったのだ。ワカヒコが本来の役目を忘れ、8年もの間、高天原に帰らないことを問いただした。

それを察したワカヒコが雉を矢で射ったのだ。

 

その矢は悪いことに高天原まで届き、アマテラス大御神とタカミムスビの大神のもとに落ちた。この二神は

「ワカヒコがもし本来の任務を忘れ雉を射ったのなら、この矢はワカヒコに当たれ」

と言霊を込めて矢を地上に投げ返した。その言霊の通り矢はワカヒコに当たったのだった。

 

ワカヒコはこうして亡くなった。

愛する夫を突然亡くしたシタテルヒメに、かける言葉が見つからなかった。

シタテルヒメはいつまでも泣き続けていた・・

 

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☆天雅彦神社

 

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ワカヒコは滋賀県犬山郡豊郷町の天雅彦神社(あめのわかひこじんじゃ)に祀られています。

ここにワカヒコが立ち寄り、風光明媚なこの地に称賛されたそうです。そのためワカヒコの没後、妻のシタテルヒメがこの地に遺体を埋葬されたのが天雅彦神社の始まりだそうです。

 

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