スクナビコナは遠い国に行ってしまった。私の心にはぽっかりと大きな穴が開いたように感じた。
これまで二人三脚で、日本の国を豊かにするために尽力してきた、その相棒がいなくなってしまったのだ。彼がいなくては、何もする気が起きなかった。
・・・しかし、そうはいっても、わたしは日本の支配者だ。日々、こなさなければならない政務が山とある・・・
私はその政務に忙殺していった。スクナビコナのことを忘れるかのように・・・しかし忘れようと思っても、忘れられるものでもなかった。
そんなある日、多忙な政務に一区切りつけて、わたしは美保岬に来ていた。初めてスクナビコナと出会った場所だ。
その海岸に立って沖を見つめた。もしかしたらスクナビコナが再び草の実の船に乗ってやってくるんではないかと・・・そんな淡い期待をもって・・・
だが、波は幾度となく押し寄せても、何も運んできてはくれなかった・・・ただ大海原が広がっているだけだ・・・
私はいたたまれなくなって、海に向かって叫んだ。
「ああ、スクナビコナ!お前がいてくれたら・・・
これからわたし一人で、どうやってこの日本をより良き国にしていけばいいのか!
誰か、私と組んで日本の国を造ってくれる神はいないのか!」
その時だった。
沖のほうから神々しい、まばゆい光が輝いたのだった・・
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