古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

小さな神の正体

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海から来た小さな神。誰もその正体を知らなかったが、ヒキガエルが「クエビコの神なら知っています」と教えてくれた。

 

わたしはさっそくその神を連れて、クエビコのもとに赴いていった。

 

ところで、クエビコというのは、山田の案山子(カカシ)のことである。

カカシだから、歩くことはできない。しかし昼も夜も、雨の日も風の日も、休むことなく田の中にいつも一本の足で立っていて、瞬きひとつせず世界中を見渡している。だから世の中のことは何でも知っている神だという。

 

 

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さて、クエビコに尋ねてみると

「その小さな神は、スクナビコナの神ですね。高天原にいらっしゃいますカミムスビの大神の御子であります」

と答えた。

 

カミムスビの大神と言えば、この世で初めて生まれた造化三神の一人である。

 

まだ天も地も固まらずどろどろしていた大昔、造化三神はお生まれになった。まずアメノミナカヌシの神が生まれ、次にタカミムスビの神が生まれ、そして3番目に生まれたのがカミムスビの神だ。気の遠くなるようなはるかな太古の出来事である。

それこそまさに雲の上の神であった。

 

そんなカミムスビの神に子がいたとは・・・意外だ。にわかには信じられなかった。

そこでわたしは高天原へ遣いを出した。

 

数日後、カミムスビの大神から返事が届いた。

 

スクナビコナは確かにわたしの子である。あまりに小さいので、わたしの手の指の間からこぼれて下に落ちていったのだ。

これも何かの縁だ。これからはそなたと兄弟の契りを結び、協力して日本の国を作り上げていくがよい」

 

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オオクニヌシの自伝 目次

 

 

☆久延彦神社

 

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カカシの神、クエビコ(久延彦)。智恵の神・学問の神として、奈良県桜井市大神神社末社の久延彦神社に祀られています。

 

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☆手間天神社

 

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宍道湖から中海に流れる大橋川の中にぽっこり浮かぶ塩楯島。スクナビコナカミムスビの手の間から降臨した時に海の塩が固まってできたといわれ、島内の手間天神社ではスクナビコナを祀ってあります。

通常、上陸はできませんが、山陰本線に乗ると松江~東松江間の北側車窓に見ることができます。

 

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