古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

海から来た小さな神

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さて、我が妻スセリヒメとの間には、ヤガミヒメヌナカワヒメを巡ってなんだかんだあったが、その間にもわたしは支配地を広げ、ついには日本全土をその手中におさめようとしていた。

 

もっとも国の支配というのは、ただ力で抑えればいいというものでもない。支配者となった以上、民が豊かに過ごせるように統治していく責任がある。

この日本を豊かな国に作り上げていくにはどうすればいいか・・・わたしは日々、考えあぐねていた。

 

そんな折のことである。

わたしは出雲の美保岬にきていた。そこの海岸を歩いていて、ふと海岸のほうに目をやってみた。

すると何か、海の沖の方から三保岬の海岸に向かって流れてくるのが目に入ったのである。

 

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≪美保岬≫

 

ふだんであればそんなもの、気にも留めないだろう。しかしわたしは何かそれに引き付けられるものを感じ、じっと見ていた。

それは沖の方から、確かにこちらに流れてくる。しかしいつまでたっても寄ってこず、遠くに見えたままだった。不思議だ・・・

 

そして本当に近寄ってきたとき、その訳が分かった・・・それはものすごく小さいものだった。なのでいつまでも遠くにあるように見えたのだ。

そしてさらに近づき、その形がはっきりわかるようになった・・・それは・・・

 

小さな神だった。

 

草の実を二つに割った船に乗り、蛾の皮をはいで作った着物を着ている・・・それほど小さな神だった。

 

私はあっけにとられてみていた。

するとその草の実を割った舟は、浜に乗り上げた。

そこから降りてきた、蛾の皮の着物を着た小さな神は、わたしの前に立つとちょこんとお辞儀をした。

 

「そなた、いったい何者だ?」

わたしはたずねてみた。

 

しかしその小さな神は、にこにこ笑うだけで、何も答えなかった。

 

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