オオハツセとオシハは連れ立って淡海の久多綿の蚊屋野に狩猟に来ていた。その野に着いた夜、二人は別々に仮宮を作って宿泊した。
さて翌朝、まだ暗い時分、オシハは馬に乗って出立した。そしてオオハツセの泊まる仮宮に着くと、大声で
「オオハツセ様~まだお目覚めになりませんか!?もう夜は明けましたぞ~!お急ぎ支度をされて狩場においでください!オシハは先に言ってお待ちしておりますぞ~!」
そういうと、馬を返して野のほうに進めていった。
これをオオハツセの家臣も聞いていた。家臣は勿論、朝廷内がオオハツセ派とオシハ派とに分かれて争っているのを知っている。
もっともオシハ自身は皇位を継ぐ考えはなく、オオハツセを討とうという下心などは全くなかった。
しかし家臣はオオハツセに進言する。
「御用心くださいませ、何を仕掛けてくるかわかりませんぞ!しっかり御身をお守りくださいませ!」
元よりオオハツセはその進言を聞くまでもなく、服の中に鎧を着込み、弓矢をもって馬に乗り、オシハを追いかけてて言った。
馬に乗って進むオシハは、後ろから追いかけてくるオオハツセに気づいた。オシハは笑顔でオオハツセに語り掛ける。
「おう、オオハツセ様!遅うございましたな!私は既に・・・うっ・・・」
オシハのその言葉は、言い終わることは無かった。一瞬、オシハの悲鳴が響いた。
・・・オシハは馬から落下し、動かなくなった。主を失った馬は驚き、そのまま駆け去っていった。
オオハツセが放った矢はオシハの急所を貫いていた。
オオハツセはオシハの死体を切り刻み、飼葉桶に入れて地面の下に埋めてしまった。
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☆古墳
古代豪族の墓である古墳は全国各地に造られています。古墳は土を盛ってつくられます。そして石室は地面より低い位置に置かれることはありません。
すなわち「地面の下に埋めた」ということは一般庶民と同じ扱いをしたということで、しかも遺体を刻んで飼葉桶に入れて、ということは相当卑しめる行為だったと思われます。
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