播磨の国から宮中に戻ってきたオケとヲケの兄弟。弟のヲケが第23代の皇位を継ぐことになった。後の顕宗天皇である。
天皇は父親のオシハをきちんと埋葬しようと思った。
オシハは政敵だったオオハツセ・後の雄略天皇により暗殺され、その遺体は切り刻まれて馬の飼葉桶に入れられ、地面の下に埋められてしまったのだ。
その魂を弔ってやらねば死んでも死にきれないだろう。
しかし、その遺体の探索は難航した。何十年も前のことだ。何の目印もなく野のど真ん中に埋められたものだから無理もない。
そんなあるとき、一人の老女が天皇のもとに訪ねてきた。
淡海国から来たという老女は
「わたくしは父君オシハさまが埋められたところを知っております」
という。
「なに!本当か?」
「はい、あの日わたくしは淡海の蚊屋野におり、巡行されてきたオシハさまをご案内して回りました。とてもやさしく、貴いご身分のお方ながら賎しいわたくしに気さくに話しかけてくださいました。
しかしそのあくる日の日の夜、オオハツセ様に殺されたとの報が入ったのです。翌日、蚊屋野に出てみると、土を掘り返した真新しい跡がありました。
そこにオシハさまが埋められたに違いありません。その場所は今でもよく覚えております」
「うむ、そうか・・しかし骨が見つかったとして、どうすればそれが父のものと判るだろうか・・」
ここでそばに控えていた兄のオケが口をはさんだ
「陛下!昔、父上の家臣だったものから聞きましたが・・父上には大きな三つに分かれた八重歯があったそうです」
老女が続けて答える。
「はい、さようにございます。オシハさまがお笑いになった時のその歯、よく覚えております。それを見ればオシハさまの御骨だとわかります」
「そうか、早速、人足を送って掘ってみよう。おばあさん、すまないがそこまで案内してくれ」
こうして老女の案内する場所を掘ってみると、果たして老女の言う通り、三つに分かれた大きな八重歯を持つ人骨が出てきた。オシハの遺骨だった。
天皇と兄のオケは、蚊屋野の東の山に御陵を造営し、父オシハの遺骨を手厚く葬った。
そしてオシハが殺されるきっかけを作ったカラフクロに墓守を命じ、その子らにも代々墓守としてオシハの御魂に仕えさせたという。
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☆市辺押磐皇子御陵
オシハの御陵と伝えられています。
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