炎の中から生まれた三つ子、それぞれホデリ・ホスセリ・ホオリと命名された。
次男のホスセリは残念ながら早世してしまったが、長男ホデリと三男ホオリはすくすくと成長していった。
そしてニニギの亡き後、高千穂の宮ではホデリとホオリが共同で日本の国を統治していた。
ふたりは忙しい政務の合間を縫って、それぞれの趣味を楽しんでいた。
ホデリは暇をみては海に出て、魚釣りを楽しんでいた。
一方のホオリは山に入り、弓矢で狩猟を楽しんでいたのである。
日向の民たちはこのような天の御子たちを見て、それぞれ「海の幸彦」「山の幸彦」と呼んで親しんでいた。
ある日のこと、山幸彦こと弟のホオリは、海幸彦こと兄のホデリに言った。
「お兄様、それぞれ道具を交換してみませんか。わたしは釣り道具を持って海に行き、お兄様は弓矢をもって山に行って見るのです。いつもと違ったことが楽しめて、面白いかもしれませんよ」
「やめておけ。俺は海で釣りをするのが好きなんだ。山に行くのは俺の趣味じゃない。なれないことをしたってうまくいくわけがない」
兄・ホデリは弟・ホオリの申し出を断った。
しかしホオリは二度も三度も頼み込んでくるので、しぶしぶ道具を交換することにした。
「この釣り針は俺の大事な釣り針だからな、絶対に無くさないでくれよ」
ホデリはくれぐれも、念を押して言った。
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