神功皇后ことオキナガタラシヒメは、巫女としての能力を持っていた。すなわち神の依代として、神の言葉を伝えることができたのである。
そして詞志比宮に天皇の軍が進軍し滞在している間、熊襲征伐の成否を占うことにした。
その夜、神庭にはかがり火がたかれた。かがり火の前に皇后が立ち、一心不乱に祈りをささげる。
離れた場所では天皇が神琴を弾き、そばには重臣の建内宿祢(たけうちのすくね)が控えていた。
闇夜に琴の音が響く中、祝詞を唱えていた皇后・・・するとふと、皇后の祝詞が途切れた・・・
どうやら神が皇后に乗り移ったようだ。
皇后はおもむろに、神の言葉を告げ始める。
「西のほうに国がある。金銀をはじめ、光り輝く珍しい多くの宝物がその国にはある。我は今、その国を与えよう。熊襲よりも西の国に行くがよい」
それが神がかりした皇后の言葉だった。
しかし天皇は、その神のお告げに不信を抱く。
「山の上に登って西のほうを見ても、国など何も見えない。ただ海が広がっているだけだ。さてはこの神、偽りを言う神だな・・」
そう言って琴を弾くのをやめた。
すると、神がかりした皇后が、再び口を開く。
「この天下はそなたが治める資格はない。そなたが向かう道はただ一つであろうぞ!」
静かな口調であるが、その言葉からは不気味な怒りが感じられた。そばにいた建内宿祢は背中に冷たいものを感じた気がした。
建内宿祢は天皇に
「大変恐れ多いことでございます。陛下、このままではよくありません。その琴、続けてお弾き遊ばし下さいませ」
と進言した。
言われて天皇は仕方なく、いい加減に琴を弾き始めた。しかし・・・
その音はすぐに止んだ。
建内宿祢は不審に思い、たいまつを天皇のほうにかざしてみた。
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☆建内宿祢
一般的には正史である日本書紀に従い「武内宿祢」と表記されています。
300年の生涯の間、景行・成務・仲哀・応神・仁徳の5代にわたって皇室に仕えたと言われています。
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