古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

香ぐわし花橘

 

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新嘗祭の宴席上、カミナガヒメを皆に紹介した天皇。その場にいたものは、天皇が新しい后を紹介したものと思っていた。

 

カミナガヒメは天皇のもとに進む。すると、天皇はカミナガヒメに柏の葉で作った杯を持たせ、酒を注いだ。柏の葉は神聖なものとされ、柏の杯に持った酒は特別な意味を持つとされる。

そして天皇は「さあ、行け!」と言った。

 

いったい、何が始まるのか・・一同は注目する。

 

カミナガヒメはオオサザキのそばによると、杯を差し出した。

 

「え・・・」

状況が理解できずに戸惑うオオサザキ。

 

すると天皇は言った。

「オオサザキ!香りのよい橘の花が咲いてるぞ!

上の枝は鳥がとまって枯らし、下の枝は人が摘んで枯らしたが、一つだけ残った花だ!この花はお前が招き寄せるがよい!」

 

「え・・父上・・」

 

オオサザキは、だんだん理解してきた・・・一つだけ残った橘の花・・つまりカミナガヒメはお前が嫁にしろと・・・そう天皇は言ってるのだと・・。

 

天皇は続けて言った

「依網池(よさみいけ)にはすでに杭が打たれて、ジュンサイ取りが手を伸ばしていたというのにな・・それも知らずに池を目指していたとは、なんとも悔しいことよ!

わっはっは!」

 

カミナガヒメから柏の杯を受け取ったオオサザキは、酒を飲み干すとカミナガヒメの手を取った。

そして天皇のほうを向き直り

「父上!ありがとうございます」

というと、カミナガヒメと手を取り合ったまま二人で頭を下げた。

 

宴席からは、割れるような祝福の拍手がいつまでも続いていた。

 

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