古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

皇后に御子が!

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天皇崩御に、詞志比宮(かしいのみや)は大騒ぎとなった。

 

急ぎ天皇の遺体を裳宮に安置した。

さらに国中に犯罪を取り締まるよう通達を出し、生きたまま獣の皮をはいだもの、逆さにして獣の皮をはいだもの、田を壊したもの、水路を埋めたもの、神域での放糞、近親相姦、獣姦など、ありとあらゆる犯罪者を捕らえた。

こうして国としての穢れを祓ったのだ。

 

そのうえで、再び皇后を神の依代として、神託を請う占いの儀式が行われた。

 

かがり火の前で、先日と同じく皇后祝詞を唱えていた。と、その祝詞が止んだかと思うと、皇后は神の言葉を告げる。

 

「皇后は懐妊している。この国は皇后の中にいる御子が治める国である」

 

意外な言葉に、その場にいたものはみな息をのんだ。

 

一瞬の静寂の後、建内宿祢が口を開いた。

「恐れいりますが、その子はどのような御子でございますか?」

 

その問いに皇后に降りた神は答える。

「男子である」

 

建内宿祢はもう一度問いかけた

「恐れ入りますが、大神様、御名をお教えくださいまし」

 

皇后は

「これはアマテラス大御神の御心である。我はソコツツノオ、ナカツツノオ、ウワツツノオの住吉三神である。

今、西方の国を求めようと思うのなら、天神地神、山の神海の神ことごとく祀り、我が住吉の御霊を船上に祀るがよい。

さらに神木の灰を瓢箪に入れ、箸と柏の葉の皿をたくさん作って、それを海に流して浮かべるのだ。こうやって渡海すれば、そなたの国はきっと繁栄するであろう」

と述べ、そして依りついた神は帰っていったようだった。

 

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 住吉三神

 

ソコツツノオ、ナカツツノオ、ウワツツノオの住吉三神イザナギが黄泉の国に行き、帰ってきて禊をしたときに産まれた神です。航海の神として祀られています。

 

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