反逆者オシクマを征伐した後、朝廷の重臣・建内宿祢(たけうちすくね)は御子ホムダワケを連れて旅に出ていた。
旅の目的は、禊である。
敵を欺くための策略とはいえ、死者を運ぶ喪船にのせられた御子ホムダワケ。死者の穢れを祓う必要があったのである。
建内宿祢とホムダワケは、淡海(おうみ)から若狭を経て、古志の国、角賀(つぬが)まで来ていた。そこに仮宮を造り、しばらくの間滞在していた。
そのころには赤子だったホムダワケも成長し、しっかり言葉を話せるまでに大きくなっていた。
そんなある日、ホムダワケは不思議な夢を見た。
そこは海岸だった。ホムダワケは一人、その海岸に立っていた。すると突然、海から一人の神が現れたのだ。
神は凛とした声でホムダワケに話しかける。
「天の御子よ、我はこの土地の神、イザサワケである。そなたに願いがある。我が名とそなたの名とを取り替えてほしいのだ」
ホムダワケは答えて言った
「恐れ多いことでございます。大神の意のままに、わたくしは従います」
するとその神は
「明日の朝、浜に出るがよい。名を替えてもらった証しをそなたに賜ろう」
神の言葉が終わったところで、ホムダワケは目が覚めた。
翌朝、ホムダワケと建内宿祢は連れ立って海岸に行って見た。すると、そこで二人が見たものは・・
海岸を埋め尽くすほどのたくさんのイルカだった。
建内宿祢は
「殿下、これは大神からの賜りものに違いありません」
とホムダワケに進言した。
ホムダワケは
「ああ、大神様・・私にこんなにもたくさんの魚を・・ありがとうございます」
と、海に向かって礼を述べた。
イザサワケの神は、御食津大神(みけつおおかみ)ともいわれるようになった。今は気比大神(けひのおおかみ)ともいう。
また、そのイルカの鼻は傷があり血が流れ出ていた。その地を後世の人は血浦というようになった。今は津奴賀(つぬが)という。
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古事記中巻 神武天皇~応神天皇 目次
☆角賀・都奴賀
☆気比神宮
イザサワケが鎮座されています。
しかし、名を替える、ってどういうことなんだろう?両者ともこの後もイザサワケ、ホムダワケのままかわってないし・・
「名」と「魚(な)」の交換のことだ、ともいわれますが・・よくわかりません。
≪リンク≫
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古事記ゆかりの地を訪ねて