さて、道具を交換してもらった山の幸彦こと弟のホオリは、気分良くウキウキしながら海に出向いていった。
ホオリは岩場に腰掛けて、釣り糸を垂らす。さあ、なにが釣れるだろうか。
・・・
なにも釣れるわけがない。ホオリは海のことに関しては何も知らない素人、いきなり道具を交換したところでうまくいくわけがないのだ。
何時間たっただろうか・・・ホオリは釣り竿から釣り糸を垂らしたまま、退屈していた。
あ~あ・・・やっぱ、お兄様の言う通り、うまくいかないもんだな~・・・でも、無理矢理頼み込んで道具を交換してもらった手前、小さいのでもいいから何か釣って帰らないと・・・でも釣れそうにないな~~
ホオリは困っていた。その時だった。竿がぐっと引いた。
しめたっ!大きいぞ!
ホオリは慌ててグイっと一気に竿を上げた・・・
・・・結果は当然・・・
糸がぷつんと切れ、かかった魚はそのまま逃げだしていったのだ・・・
「あ・・・釣り針が・・・」
そう、ホデリからくれぐれも無くすなと言われていた針は、いとも簡単に海の中に消えていったのだった。
・・・どうしよう・・・ホオリは重い足取りで高千穂の宮に帰っていった。
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