ホデリの心は荒んでいた。
ホオリの奴、釣り針を返す時に呪いをかけやがったな・・・
ならばこっちは実力で滅ぼすまでだ!
ホデリは軍勢を整え、自ら先頭に立ってホオリの屋敷に攻めてきた。
ホデリは貧しくなったとはいっても、まだ高千穂の宮の大軍を手中にしている。一方、高千穂の宮を出ていったホオリはというと、わずかな従者が屋敷を警護しているだけであった。
どう考えてもこの戦い、ホデリの圧勝である。
「ホオリさま!兄君の大軍が屋敷を取り囲んでおります!」
従者たちの間では動揺が広がっていた。腹心の従者たちは、悲壮な覚悟を決めていた。
「ホオリさま!我々が打って出ます!我々が敵を引き付けている間、ホオリさまは隙を見てお逃げくださいませ」
しかし、当のホオリは涼しい顔だった。
「皆、屋根の上に上がれ!」
「え?そんなことをしては、格好の矢の餌食となってしまいます」
「心配するな!ほんのわずかな間、戸板で楯を作って身を守ってくれ」
「しかしそんなことをしても、結局はやられてしまいますぞ!」
「いいからいう通りにするんだ!」
ホオリが言うので、従者たちは半信半疑ながらも戸板で身を守りながら、ホオリを囲むようにして屋根の上に集まった。
「なんだ?あいつら屋根の上に上がって?あれで逃げられると思ってるのか?!」
ホデリの軍勢はあざ笑うかのように、雨あられのように矢を射かける。
もうだめだ!防ぎきれない!ホオリを囲む従者たちは覚悟を決めた。
その時、ホオリは一つの玉を取り出した。海神からもらったシオミツダマだった。
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