古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

針が・・・

山幸彦の自伝 4

 

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さて、その翌日。わたしは兄ホデリの道具を持ち、勇んで日向の海にやってきた。そして、魚がよく取れそうな磯を探し出すと、そこに腰掛けた。

 

天気はとてもよく、穏やかな陽が降り注いでいる。磯に寄せる波の音が心地よい。絶好の釣り日和だ。

 

「よーし、やるぞー!!」

 

私はワクワクしながら、海に釣り糸を垂らした。さあ、どんな魚が釣れるだろうか・・・

 

ひとときの間が過ぎた・・つれない。なに、もう少し待てば釣れるさ・・・

 

ふたときもたった・・・つれない。場所が悪いのだろうか・・・少し移動して別の磯で釣り糸を垂らしてみた。

 

みときが過ぎた・・・つれない。やっぱりホデリの言う通り、道具を変えっこしてもうまくいかないもんなんだろうか・・・

 

その時だった!!急に糸が引いたのだ。魚がかかったに違いない。この時を待っていた!それっ!わたしは思いっきり、竿を振り上げた・・・

 

ぷつんっ!

 

糸が切れた・・・やっととれた魚をに逃げられてしまった・・・

 

あ~あ、やっぱりうまくいかないものだな・・・兄上の言う通りだったな・・・帰ったら兄上に散々嫌味を言われるだろうな・・・仕方ないな・・・

 

わたしはあきらめて帰ろうとした。その時、わたしはホデリが言った言葉を思い出したのだ!

 

「この針は大事な針だからな、くれぐれも無くさないでくれよ」

とホデリは言った。その大事な針を、魚と一緒に持っていかれたのだ・・・

 

  

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山幸彦の自伝

 


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