古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

四道将軍

オオビコの自伝 8

 

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疫病が鎮まってから時がたった。

 

ある日、わたしは陛下の命により、御前に召された。

わたしだけではなかった。息子のタケヌナカワも一緒に召されたのだ。我ら親子は何事かと陛下の宮殿に向かった。

 

すると、宮殿にはヒコイマスとキビツヒコがいた。二人も呼ばれていたのだ。わたしと息子もあわせて計4人、いずれも武勇に長けた猛者ばかりである。一体何事だろう・・・

 

我々は4人そろって御前に進み、膝まづいた。

「おもてを上げるがよい」

陛下の凛とした声が響く。

 

「ご苦労だった。今日集まってもらったわけは、そなたらに日本の周辺部族を朝廷に従わせてほしいのだ。

皆も知っての通り、日本の各地にはまだ朝廷に従っていない部族も数多い。畿内から遠く離れた国では、民は天つ神のもとにその恩恵を受けてはいないのが実情だ。

そうした遠方の部族を道理の下、朝廷に服させてほしいのだ。そのためにそなたらを四方に派遣したい。よいな」

 

そういって、陛下自ら我々に印綬を授けられた。

 

陛下の言う通り、まだ日本は各地に部族が覇を争っていた。彼らに朝廷の威光のもとに従わせ、統一した日本を作り上げるのは代々の皇室にとって成し遂げなければならない課題であったのだ。

わたしは気が引き締まる思いであった。一緒に呼ばれたほかの3人も同じ思いであったに違いない。

 

「はい、謹んでお受けいたします」

我々は皆一同に答えた。

 

陛下は続けて

「もし命令に従わないものがあれば、その時は遠慮なく武力をもって討て」

と仰せになった。

 

ヒコイマスは丹波のほうに、キビツヒコは西方に派遣されることになった。わたしの息子タケヌナカワは東海道に派遣されることになった。

そしてわたしは北陸道へ派遣されることになったのだ。

 

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オオビコの自伝 目次

 

 

四道将軍

崇神天皇のもと日本各地に派遣された4人の武将を「四道将軍」と言っています。

 

☆オオビコ

本話の語り手のオオビコは北陸道に派遣されました。

 

☆タケヌナカワ

タケヌナカワはオオビコの息子です。東海道のほうへ派遣されました。

茨城県結城市の健田須賀神社は結城国造となった竹田臣が祖神のタケヌナカワを祀ったものと伝えられます。

 

wikipedia 健田須賀神社

 

☆ヒコイマス

ヒコイマスは崇神天皇の異母弟です。丹波、すなわち現在の京都府北部のほうへ派遣されました。

岐阜県岐阜市の伊波乃西神社によると美濃国の治山治水開発に努めたと伝えられ、この地で亡くなったとされます。隣接する日子坐命墓がヒコイマスの墓と伝えられます。

 

wikipedia 伊波乃西神社

 

なお、日本書紀においてはヒコイマスの息子の「丹波道主命」(たにわのみちぬしのみこと)が派遣されたことになっています。

京都府京丹後市の神谷太刀宮神社は丹波道主命出雲国からオオクニヌシを招き祀ったと伝えられます。兵庫県丹波篠山市の雲部車塚古墳が丹波道主命の墓と伝えられます。

 

wikipedia 神谷太刀宮神社

 

wikipedia 雲部車塚古墳

 

☆キビツヒコ

第7代孝霊天皇の皇子になります。

 

日本書紀においては崇神天皇の項目で「吉備津彦」がほかの3人と一緒に派遣されています。しかし古事記においては崇神天皇の項目には記述がなく、孝霊天皇の項目において皇子の「大吉備津彦命」(おおきびつひこのみこと)とその異母弟の「若建吉備津彦命」(わかたけきびつひこのみこと)が共同で派遣されたと記述されています。

なお、前話で出てきたヤマトトトモソヒメは「大吉備津彦」の同母姉です。

 

キビツヒコが平定した吉備の国は、後に備前・備中・備後に分割されました。

岡山県岡山市北区一宮の吉備津彦神社(備前国一宮)・同北区吉備津の吉備津神社備中国一宮)・広島県福山市吉備津神社備後国一宮)にそれぞれキビツヒコが祀られています。岡山市北区の中山茶臼山古墳がキビツヒコの墓とされています。

 

wikipedia 吉備津彦神社(備前国一宮)

wikipedia 吉備津神社(備中国一宮)

wikipedia 吉備津神社(備後国一宮)

wikipedia 中山茶臼山古墳

 

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