古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

都に帰るオケとヲケ

 

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シジムの屋敷の新築祝いでその正体を明かしたオケとヲケ。朝廷から派遣されていたオタテは慌てて駆け寄るあまり、土間に転げ落ちてしまった。

それを見たオケとヲケが駆け寄る。

 

「ああっ・・大丈夫ですか!?」

「いえ・・御子の苦労に比べたら、なんてことはありませぬ・・・

シジム殿!御子の御前ですぞ!人払いを!」

 

言われてシジムは慌てて会場にいた人を外に追い出した。

 

オタテはオケとヲケの前で涙を流しながら言う

「ああ・・どれだけお探し申し上げたことか・・・ご無事で何よりでございます・・」

 

オタテは急ぎ土地のものを集めて仮宮を造り、そこにオケとヲケを一時滞在させることにした。

平伏してオケとヲケを送り出すシジム。まさか、自分が使っていた下働きの少年が皇子だったとは夢にも思わなかっただろう。

 

ただただ恐縮し、額を地にこすりつけるシジムの前に、二人はしゃがみ込み声をかける。

「シジム様、頭を上げてください。お世話になりました。

シジム様に助けていただかなかったら、この日は来なかったでしょう。ありがとうございました。」

 

 

都には急使をたててその一報を知らせた。

これを聞いて喜んだのはイイトヨだった。彼女はオシハの同母の妹、すなわちオケとヲケにとっては叔母である。清寧天皇崩御後、次の天皇が決まるまで、一時的に朝廷で政務をつかさどっていた。

 

やがて宮中に上ってきたオケとヲケにあった時、イイトヨは涙を流しながら二人の御子を抱きしめていた。

 

さて、宮中に入ったオケとヲケは、互いに皇位を譲り合った。

 

しかし兄のオケは、弟のヲケに

「播磨にいたとき、お前がその名を明かさなければ我らが天下を治めるときは来なかっただろう。これはみんなお前の功績だ。

だから私は兄ではあるが、まずは弟のお前が天下を治めるべきだ」

と言った。

 

そしてこの言葉で弟のヲケはこれ以上辞退できずに、次の皇位につくことになった。第23代の顕宗天皇である。

 

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