古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

舞う少年

 

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シジムの家の新築祝いで舞を舞うように命じられた釜焚きの少年の兄弟。意を決した兄は前に進み出て構えた。その姿にまた、どっと笑い声が響く。

 

しかし・・・

 

少年が舞い始めると、その笑い声は消え、会場は凍り付いた。

何だ・・・この滑らかな舞は・・・こいつはいったい・・

 

そう、少年の舞は滑らかで美しいものだった。とても田舎豪族の下働き身分のものとは思えなかった。

 

兄は舞い終わった。会場から笑いは消え、と言って拍手をすることも忘れ、みな呆けた顔で少年を見つめていた。

次に弟が変わって舞う。これもまた、滑らかな美しい舞だ。

 

すると弟は、舞いながら合わせて歌を詠みはじめた。

 張り詰めた空気の中で弟の歌にみな耳を傾ける。

 

「赤い朱塗りの太刀を振る勇者、

 敵が隠れるススキの野を刈り、

 竹を根元からばらす勢いで攻め立てる。

 まさに八弦の琴を奏でるような勢いそのままに、

 天下を統治した履中天皇

 

 その御子、殺されたオシハ

 そしてオシハの子は人里に隠れ住む。

 

 そう、我らこそオシハの子

 オケとヲケの兄弟なるぞ!」

 

これを聞いた会場は大騒ぎとなった。

 

そう、兄弟の少年は、雄略天皇に暗殺されたオシハの御子だった!

雄略天皇の追手から逃亡していたオケとヲケだったのだ!

 

朝廷から派遣されたオダテもびっくりして兄弟のもとに駆け寄った。あまりに慌てて、床から土間に転げ落ちたほどだった。

 

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☆志染の石室

 

播磨国風土記にも同じ話が載っており、そこにはオケとヲケの兄弟は志深(しじみ)の村の岩屋に隠れた、と記載されています。

兵庫県三木市志染町に兄弟が隠れ住んだという「志染の石室」(しじみのいわむろ)が残っています。

 

志染の石室 wikipedia

 

≪リンク≫
 
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