ある日、ニニギは宮殿を出て、笠沙の岬を見回っていた。するとそこに、とても美しい少女を見つけた。
その少女を見た瞬間、ニニギは何か神秘的なものを感じた・・・そう、あたかも前世から結ばれる運命にあったような・・・
・・・要するに「一目ぼれ」であるが・・・
ニニギはその少女に近づき、言った。
「わたしは天の御子、ニニギと言います。あなた、お名前は?」
少女はびくっとし、緊張した。まさか自分が天の御子から声をかけられるなんて、思ってもいなかったのだろう。
「は・・・はい、わたくしはオオヤマツミの娘でコノハナサクヤビメと申します」
ニニギは言う
「わたしはそなたを嫁に迎えたいと思う。どうだろうか」
「はい、急に申されましても・・・父上に相談してみないことには、なんとも・・・」
そこでニニギは従者にコノハナサクヤビメをオオヤマツミの屋敷まで送り届け、オオヤマツミの返事を聞いてくるように命じた。
自分は一足先に宮殿に帰っていった。
一刻後、従者が戻ってきて報告した。
「オオヤマツミさまは、コノハナサクヤビメさまが天の御子に見初められたことをとてもお喜びでした。つきましては明日、姉のイワナガヒメさまも添えて、二人の娘を宮中に献上するとのお返事であります」
これを聞き、ニニギの心は踊っていた。
古代、有力者のもとに姉妹で嫁がせることは、ごく普通によくあることだった。
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イザナギとイザナミが産んだ山の神ですが、日本神話においてはあまり活躍の場面はありません。
しかしこのオオヤマツミ、コノハナサクヤビメの父親であるほかに、スサノオの嫁クシナダヒメの祖父でもあるのです。
オオヤマツミの子でクシナダヒメの父であるアシナヅチは、登場時は既におじいさんという設定です。
古事記を読んでると、時間の流れが訳わからなくなってきます。神様の話、神話だからと言ってしまえばそれまでですが・・・