わたしは次にタケミナカタのほうを振り向き言った
「タケミナカタ、お前はどう思う?」
しかし、振り向いた先には、タケミナカタはいなかった。あれ、どこに行ったのだ?
辺りを見回した。すると・・・
タケミナカタは、浜の波打ち際にいる、タケミカヅチに向かって歩いていたのである。どこから持ってきたのだろうか、頭上には大きな岩を両手で持ち上げている。
千人がかりでも持てないほどの大岩である。
「この日本の国は、父上が苦労して築き上げたものだぞ!それを、国が豊かになったら、本来は自分のものだから返せとは、何たる勝手な言い分!
そんな要求がのめるか!帰れ!」
タケミカヅチの声に勝るとも劣らぬ、恐ろしい大声である。その声は海の果てまで響き渡るほどだ。
言ったかと思うと、タケミナカタは頭上に掲げた大岩を、タケミカヅチに向かって放り投げた。
大岩はタケミカヅチの頭上すれすれを飛んでいき、はるか遠くの海上にドボンと落ちた。その衝撃で海は大きく波立つ。
タケミナカタは勇猛果敢な軍人である。軍勢の司令官として数々の戦いに出陣し、幾度も死線を潜り抜けてきた猛者だ。
もっとも、タケミカヅチにしても、この程度の脅しに何も動じることは無かった。剣の切っ先にあぐらをかいたまま、近づいてくるタケミナカタをにらみつけていた。
わたしは黙って成り行きをを見守っていた
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茨城県鹿嶋市の鹿島神宮に祀られています。中臣氏・藤原氏の氏神として、また武家の間で軍神として信仰を集めてきました。
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