その頃、新田の開発は統治者にとって重要な関心事だった。田畑を切り開き、食糧を増産することは、すなわち人口の増加につながりそれだけ国力は増大する。
その年、兄ホデリは高台を切り開いて水田を造っていた。それを見たホオリは低地に水田を切り開いた。
その年は雨が降らず、日照り続きだった。高台には水は回らず、ホデリの田ではほとんど収穫ができなかった。一方、低地のホオリの田は川の水を引き入れることができ、水で潤い、日差しにも恵まれて豊作だった。
「ホオリめ、今に見てろ!」
ホデリは翌年、低地に水田を切り開いた。するとホオリは高台に水田を造った。
その年は、今度は長雨が続いた。水はけの悪いホデリの田では稲が穂先まで水没し、その年もほとんど収穫はなかった。一方高台のホオリの田ではその年も豊作だった。
そんなホデリからは、民の人心も離れていった。ホデリはどんどん貧乏になっていった。
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