山幸彦ことホオリは高千穂の宮に帰っていった。
「お兄様、ただいま戻りました」
「ん?なんだ、ホオリ、お前3年もの間どこに行ってたんだ?お前のいない間、おれは日本の政務を一人で見てきたんだぞ」
「すいません、お兄様。しかしこの通り、釣り針は探し出してまいりました」
「おお、おれの針か!」
海幸彦のホデリは喜んで受け取ろうとした。
と、その時、ホオリはくるりと背中を向けた。そして後ろ手に
「オボチ・ススチ・マヂチ・ウルチ」と、例の呪文を唱えた。
ホデリは「なんだ、こいつ、変な奴だな」と思ったが、しかし針が戻ってきた嬉しさのほうが強かった。早速ホデリは海つりに出かけて行った。
しかし、小魚一匹とれなかった。翌日も、その次の日も・・・
あれほどたくさん釣れた魚が、一向に獲れなくなったのだ。
ホデリは針を返してもらったときのことを思い出した。
「あいつ、何か呪いをかけやがったな・・・」
当然のことながらホデリとホオリの仲は悪くなり、ちょっとしたことで争いごとが頻発するようになった。
ホオリは高千穂の宮を出て、海神の宮殿から戻ってきた海岸近くに新たに自分の宮殿を建てることにした。
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☆青島神社
浦島太郎の世界では数百年の時が過ぎていたようですが、ここでは海底も地上も時の流れは同じようですね。
日本に戻ってきたホオリは青島に上陸して宮を営んだそうです。
現在は観光地として人気の青島、江戸時代までは神の島として一般人の上陸は固く禁止されていました。