古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

ミヤズヒメと再会

ヤマトタケルの自伝 27

 

 

わたしは険しい信濃国をすぎて、美濃を経て尾張国まで戻ってきた。

もうここまで来たら、あとは大和に戻るだけだ・・長い旅路だった・・

 

尾張・・・そう、結婚を約束した尾張国造の娘、ミヤズヒメがいる地だ・・

もうあれから何年もたつ・・・ミヤズヒメは今も待ってくれているだろうか、それとも誰かの妻になっているだろうか・・

 

あの時はこんなに長い旅路になるとは思っていなかったのだ・・。

 

わたしは尾張国造の屋敷に急いだ!

 

果たして・・・ミヤズヒメは・・・

 

ミヤズヒメは、そこに居た!!わたしとの約束をまもって、誰の妻にもなってなかったのだ!・・

「ミヤズヒメ!よくぞ待っていてくれた!!」

ヤマトタケルさま!!お待ちしておりました!」

 

尾張国造によると、ミヤズヒメの元には求婚する男が次々と現れたらしい。しかしミヤズヒメはかたくなに、わたしとの約束があるからと断り続けていたという。

 

ミヤズヒメ・・・そこまでしてわたしを・・・ありがとう!

わたしはミヤズヒメの手をしっかり握りながら、思わず涙を流していた・・・

 

この夜、尾張国造はわたしの歓迎のための宴を開いてくれた。

ミヤズヒメはわたしの元に酒を、御馳走を運んできてくれる。

 

ところがわたしの元に来たミヤズヒメの着物の裾にが血がついていた

・・・月経の血だ・・・

 

これを見たわたしは、歌を詠んだ

 

  天の香久山 空高く

  優雅に飛び行く 白鳥の

  長く伸びた 細い首

 

  その首に似た 君の腕

  細く白く 美しい

  その手を抱こうと 思いつつ

 

  その手を取れば 君が着る

  着物の裾に 美しく

  赤い月が 照らしてる

 

わたしのこの歌を聞いたミヤズヒメは、そっと顔を横に向け、歌を返して詠んだ

 

  天に輝く 日の御子よ

  国をまとめる 大君よ

  流れすぎゆく 年月は

  古い月さえ 消し去って

 

  思いはつのる 君を待ち

  待ち焦がれてた 君が来て

  その手を取れば 我が着物

  明るく照らす 赤い月

 

そしてその後しばらく、わたしはミヤズヒメの屋敷に滞在したのだった。

 

≪ミヤズヒメの屋敷跡と伝わる氷上姉子神社元宮

 

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ヤマトタケルの自伝 目次

 

 

☆月経

 

「月経」という言葉と現象が記載されている日本最初の文献が古事記のこの話だとされています。昭和に入り「生理」という表現が一般的になりました。

 

現在では様々な生理用品が市販されていますが、古代には布製の生理用品があったそうです。もちろん現在のものと違って吸水性も十分ではなく、この話のように漏れて着物の裾を汚す、ということもあったでしょう。

ただしそれは貴族の女性しか使えないもので、一般庶民は枯葉などを使っていたそうです。

 

江戸時代では和紙が庶民の間にも普及し、これが使われるようになりました。明治以降、脱脂綿が使われるようになりました。

現在、普及しているナプキンが日本で発売されたのは昭和36年のことです。

 

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