ヤマトタケルの自伝 6
わたしは女装して、新築祝いの準備のために屋敷に出入りする下男下女にまぎれこんで、クマソタケルの兄弟の屋敷に忍び込むことに成功した。
そして、その夜・・・
屋敷の一室では、新築祝いの宴がにぎやかに開かれていた。
上座にはクマソタケルの兄弟が座り、ぞの周りを来客として招かれた豪族が取り囲む。そして下男下女が忙しく料理や酒を運んでいた。
すっかり酔いの回ったクマソタケルや豪族たちは、大声で騒ぎまくっている。
そんな中、わたしは酒をもって、クマソタケルのもとへ近寄っていった。クマソタケルはいい気分でわたしが差し出した酒を飲み干す。
と、その時、兄が言った
「おう、お前、かわいいな。年はいくつだ!?」
「はい、15でございます」
「おうそうか!まあ、ここに座れや!!」
クマソタケルの兄弟の間にわたしは座らせられた。
「お前、見ない顔だな?新入りか?」
「はい、昨日からお屋敷に奉公しております」
「おう、そうかそうか」
クマソタケルは上機嫌でわたしが差し出す酒を飲んでいた。と、その時である。
不意にクマソタケルの兄は私の腕をがしっとつかんだと思うと、乱暴に自分のほうに引き寄せた。
「ああっ!何をなさるのですか!!おやめください!!」
わたしは叫んだ。しかしそんなことには構わず、酒臭い息を吹きかけながら、兄はわたしにだきつく。
これを見た豪族たちは、どっと大声で笑ってはやし立てた。助けようとするものなど誰一人いない。
クマソタケルの弟は
「おう、兄貴!次は俺の番だからな!!」
などと笑いながらはやし立てる。
兄は
「わっはっは!そう暴れるな!!いい夢を見させてやるぞ!!」
と言いながらわたしを犯そうとした。しかし・・・
ふいに兄の動きが止まった。兄はわたしの体に違和感を覚えたのだろう。そして言った
「お前、女ではないな・・・・・お前・・・」
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☆クマソタケル
古事記ではヤマトタケルが討ったのは「クマソタケル(熊曽建)の兄弟」となっています。
日本書紀では熊襲の首領は「取石鹿又(とろしかや)または川上梟帥(かわかみたける)」という名で表記されています。
「熊襲」とは肥後の「球磨郡」と大隅の「曽於郡」の両地域の名称、またその周辺に住んでいたとされる民族です。
大和朝廷の支配に服せず、ヤマトタケルの子である仲哀天皇も熊襲征伐に自ら出向いています。完全に朝廷の支配下に入ったのは西暦720年に勃発した「隼人の乱」に敗北してからでした。
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