古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

天皇の叫び

野見宿祢の自伝 10

 

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サホビメさまを奪還する作戦は失敗に終わった。陛下の落胆は、見るに忍びないほどだった。

 

陛下は茫然とされていた・・・

・・・しかし、陛下の心中は察するに余りあるが、そうかといって陛下がこのご様子では兵の士気にもかかわる・・・

 

わたしは陛下のおそばにより、声をかけた。

「陛下、これからいかがいたしましょうか?」

 

しかし、陛下は何も答えずに、力なく立ち上がったかと思うと・・・ふらふらと歩きだし、サホビコの屋敷に向かって行ったのだ!

わたしはあわてて陛下に声をかける。

 

「陛下!それ以上前に行かないでください!それ以上行くと敵の矢に狙われます!!」

 

すると、陛下は立ち止まったかと思うと、わたしのほうを振り向き

「ノミ・・・心配するな・・・」

と、生気のない、か細い声で仰せになった。

 

陛下はその場に立ち尽くし、サホビコの屋敷の門を見つめている。

そのまま、どれくらいの時が立っただろうか・・・

 

陛下は不意に、大きな声で言われた

 

「サホビメ!聞こえるか!! 

余の声が聞こえたら、門の外に出てきてくれ!!」 

 

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