野見宿祢の自伝 6
わたしは陛下からサホビコ追討のため軍勢の招集を命令された。
さっそくわたしは各所に指示を出し、兵士を集め軍備を整えさせた。それが終わると、陛下のもとに報告に行った。
「陛下、出陣の準備が整いました」
「うむ、ご苦労。それでは早速・・・」
陛下がそう言いかけたときのことだった。
そこに、陛下の側近の一人が慌てて駆け込んできた。
「陛下!大変です!お后様・・・サホビメさまが宮殿を抜け出し、サホビコの屋敷に入っていったそうであります!!」
「なに!本当か!!」
わたしも陛下も驚きの声を上げた。
「はい!間違いありません!攻撃に先立ちサホビコの屋敷を監視していた兵士からの報告です!
それによると、サホビコの屋敷では皇軍の追討を察して、屋敷の周りに大量の稲束を積み上げて防御を固めていたそうです。するとそこに一人の女性が駆け寄り、屋敷の中に入っていったということです。それが間違いなくサホビメさまだったということでした。
念のため宮殿の中を探してみましたが、サホビメさまはどこにもいらっしゃいませんでした!」
「うーむ・・・」
陛下はどうしたものかと悩んでおられる様子だった。
それもそうだろう。陛下は普段からサホビメさまをとても寵愛されていた。
サホビメさまが陛下のお頸を刺そうとされた時も、泣いて震えるサホビメさまに
「心配せずともよい。そなたはわたしの后だ。奥で休んでいなさい」
と優しく声をかけたそうだ。
陛下の命を狙ったとあれば、その場で切り殺されても文句は言えないというのに・・
わたしは陛下に
「いかがいたしましょうか?」
と声をかけた。
陛下はしばし考え込んでから
「サホビメは大事なわたしの后だ。だがそうかといって、朝廷に反逆しようとしたサホビコを許すわけにはいかぬ・・・
出陣だ!サホビコの屋敷を攻略する!!サホビメのことはまた後で考えよう」
と、仰せになったのだった。
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