古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

サホビメと天皇の夢

野見宿祢の自伝 5

 

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陛下はその日の出来事をわたしに話された。

 

その話によると、陛下は激務でお疲れになっていた。そして、お后であるサホビメ様の膝枕で、お昼寝をされていたという。

その時、夢を見たそうだ。

 

その夢はというと、サホビメさまの出身地である沙本(さほ)のほうから急に雨が降ってきて陛下のお顔を濡らした。かと思うと急に錦色の蛇が現れて、陛下の首に巻き付いた、というものだった。

 

目覚めた陛下は、サホビメさまに夢の話をして

「何ともおかしな夢を見たものだ・・・サホ、これは何かの予兆なんだろうか?・・・」

と言われたそうだ。

 

すると突然、サホビメさまは泣き崩れてしまったという。

 

サホビメさまは鳴きながら陛下の前に手を突き、

「陛下!申し訳ありません・・・実は兄が・・・・」

 

そう言って、前日、兄サホビコと会った時のことを陛下に話されたそうだ。

 

サホビコはサホビメに尋ねたという。

「お前は兄であるわたしと陛下のどちらを愛しているか?」と。

 

こう聞かれたサホビメさまは、兄を目の前にして陛下のほうを愛しているとはいえず

「兄上のほうを愛しています」

と答えてしまった。

 

すると兄サホビコは

「ならば、お前とわたしの二人で天下を取ろうじゃないか。陛下はお前の前なら無防備だから、お前なら簡単に殺れる。陛下がお休みになっている時に、この短剣でお頸を突き刺すがよい」

と言い、錦の飾りがついた短剣をお渡しになったそうだ。

 

サホビメさまはサホビコに言われた通り、自分の膝枕で寝ている陛下のお頸を刺そうとした。しかし、愛する夫である陛下を、どうして殺すことなどできようか・・・

三度、短剣を振り上げたがどうしても刺せない。そのうち涙があふれ出てきて、涙が陛下のお顔に落ちた。そして陛下のお顔を濡らしたところで陛下はお目覚めになったという。

 

そしてサホビメさまから事の次第を聞いた陛下は、サホビコの討伐のためにわたしを呼び出し、軍勢の準備をさせたというわけだった。

 

 

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野見宿祢の自伝 目次

 

 

☆狭岡神社

 

サホビメ(沙本毘賣)の出身地の沙本は現在の奈良県奈良市法蓮町と云われています。

その地の狭岡神社境内には、サホビメが姿を映して身なりを整えたという「鏡池」が残っています。

 

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