オオビコの自伝 外伝1(タケヌナカワの自伝)
わたしの名はタケヌナカワ。
第10代の天皇(すめらみこと)である今上天皇陛下の命を受けて、皇軍を率いて東海道を進軍してきた。
陛下はまだ朝廷に服していない部族を平定するため、四方に軍を派遣したのだ。わが父オオビコも軍を率いて北陸道を進軍している。
そしてわたしは東海道を進軍し、走水の海(浦賀水道)を渡り、総国(ふさのくに)を越えて常陸国まで進軍してきた。
そんな折、わたしは常陸国の安婆(あば)に陣を張り、そこで一夜を過ごすことにした。
そこは東の大海に通じる内海のほとりにあった。
ふと海の対岸を見ると、煙が上がっているのが見えた。どうやら対岸にも人が住んでいるらしい。しかしそれは、朝廷に親和的な部族か、それとも敵対的な部族か・・・ここから見ただけではわからない。
そこでわたしは誓約(うけい)で確かめることにした。
「この煙が朝廷に味方する者の煙であったなら、我がほうに流れてわたしの頭上の空を覆え!
朝廷の賊敵の煙であったなら、海のかなたになびいていけ!」
こう言って、煙の流れていく先を注視していたのである。
果たして、煙が流れていった先は・・・
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この話は記紀にはありません。常陸国風土記に載っている話をもとに構成いたしました。
常陸国風土記には、「崇神天皇の御代に東の賊を討伐するために武借間命(たけかしまのみこと)を派遣した」と記述があります。本章の話はこの武借間命の物語です。
時期と地域からしてこの武借間命が記紀に出てくるタケヌナカワのことだと思われます。(ただしよく読むと矛盾も出てくるのですが、拙ブログでは同一人物として進めてまいります)
☆安婆
この話は現在の茨城県の霞ケ浦沿岸を舞台としています。当時は湖ではなく、太平洋に通じる内海でした。
タケヌナカワが陣を張った「安婆」(あば)とは霞ケ浦南岸の茨城県稲城市の阿波だと考えられています。
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