オオビコの自伝 6
国を襲っていた疫病は収まり、日本の国は平安な日々を送っていた。
そんなある日、陛下は疫病を鎮めるのに功績があったオオタタネコを呼び出した。
「オオタタネコ、ご苦労だった。おかげで疫病も鎮まり、国民は穏やかに日々を過ごしている。そなたのおかげだ。感謝するぞ」
「はい、恐れ入ります」
「ところでオオタタネコ・・・そなたはオオモノヌシの大神の子孫だそうだな。何か、云われはあるのか?」
「はい、このような話が伝わっております」
そしてオオタタネコは、自分の先祖から伝わる話を話し出した。
「わたしの祖先のイクタマヨリビメは絶世の美女と評判だったそうです。彼女の両親は悪い男が寄ってこないようにと、イクタマヨリビメを屋敷の奥に隠し、鍵をかけていました。それにもかかわらず、妊娠したそうです。
彼女の話では、ある夜、立派な青年が現れた。それから毎夜現れて、一緒に過ごすうち身ごもったといいます。青年の素性はわからないそうです。
両親はイクタマヨリヒメに麻糸を持たせて、次に男が現れたときは着物の裾にこっぞり縫い付けなさいと言いました。イクタマヨリヒメはその通りにし、翌朝見ると糸は三勾(みわ/3巻)を残して鍵穴から出ていました。
その糸を手繰っていくと、三輪山のオオモノヌシの神殿まで続いてました。そこでイクタマヨリヒメをはらませたのはオオモノヌシの大神だと分かったのです。
そしてイクタマヨリヒメから生まれた子の末裔がわたくしでございます。
糸が三勾残っていたので、それからオオモノヌシの神の山を三輪山というようになったそうでございます」
このオオタタネコの話を聞く陛下のお顔・・・まるで苦虫をかみつぶしているようだった・・・
そしてオオタタネコが下がった後、側に控えていたわたしに向かって言った。
「オオビコ、神様と言ってもとんでもないもんがいるもんだな・・・」
わたしは返答に困ったのだが、少し考えてこう答えたのだった。
「まあ、便所でホトをつかれたという神武天皇の后の話よりかはましでございましょう・・・」
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☆三輪山
奈良県桜井市の三輪山は標高467.1m、山そのものが大神神社の御神体となっており、古い時代の神道の信仰形式を色濃く残すものとされています。
昔から一般人の入山は厳しく規制されていました。現在では大神神社摂社の狭井神社で許可を得れば入山が可能ですが、飲食・喫煙・写真撮影などは一切禁止、草木や石は持ちだせない等の決まりがあります。
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