神武天皇の自伝 29
ナガスネビコとの戦いは、我が皇軍の勝利に終わった。
皇軍を勝利に導いた金色に輝く鵄は、その様を見届けると飛び立った。そしてまた、ゆっくり旋回しながら空のかなたに飛び去って行った。
「アマテラス大御神は、ずっとわたしを見守ってくださっていたんだ・・・ありがとうございます」
わたしは東の空に向かって祈った。
そこに、わが軍の兵士にとらえられたナガスネビコが連れてこられた。兵士に抑えられ、わたしの前でしゃがみ込むナガスネビコ・・・
その姿を見ると、わたしの心の中に強い怒りの感情が沸き上がってきた・・・
「ナガスネビコ・・・我が皇軍に矢を向け、天の御子である我が兄イツセを殺害した・・・その罪は重い!
その命で償え!思い知るがよい!!」
わたしは剣を振り上げた。
その時、ナガスネビコが叫んだ。
「まて!お前は天の御子だというが、何を根拠にそんなことをいうのだ!」
「なに?わたしが天の御子ではないとでもいうのか?!」
「そうだ!わたしがお仕えするニギハヤヒさまこそが天の御子だ!!」
「なんだと・・・」
わたしはナガスネビコの意外な話に言葉を失った。一体、どういうことだ・・・?
その時、わたしはナガスネビコに対する怒りの感情をすっかり忘れていた。
ナガスネビコは言葉を続ける。
「はるか昔、ニギハヤヒさまは天磐船(あまのいわふね)に乗って高天原から日本に降臨された。わたしの妹のトミヤヒメはニギハヤヒさまの后となっており、その縁でわたしはずっとニギハヤヒさまに仕えているのだ。
天の御子が二人もいるはずがない!」
わたしは彼の話を聞いて、本当か・・・と思ったが、なんとも言えない。
わたしは言った。
「ならばお前が使えるニギハヤヒが天の御子だという証拠はあるのか?」
「これを見ろ!ニギハヤヒさまから預かったものだ!ニギハヤヒさまが降臨するときアマテラス大御神から授かった矢と矢筒を!!」
ナガスネビコは矢と矢筒を取り出し、わたしに見せた。
・・・・それを見たとき、わたしは驚愕した・・・これは・・・
・・・思わず私はつぶやいた
「本物だ・・・」と・・・
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☆磐船神社
ニギハヤヒが降臨した時に乗ってきたという天磐船は、大阪府交野市の磐船神社の御神体として祀られております。
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