山幸彦の自伝 13
海神ワタツミの宮殿に来て3年、わたしは海神にここに来たいきさつを聞かれて話した。
わたしの話を聞き終わった海神は
「さようでございましたか。天の御子ともあろうものが、なんでこんな海の底までおいでになったのか、不思議に思ってはおりましたが・・・
よろしゅうございます。兄君の針をお探しして差し上げましょう」
「え・・針を探すって・・・この広い海の中から、ですか?」
「はい、その通りですよ。まあ、海のことならわたくしにお任せくださいませ」
海神はそういうと、海の魚をすべて宮殿に集めた。大小色とりどりの無数の魚が海神の宮殿に集まった。
魚たちの前で、海神は言った
「こちらの天の御子が、釣り針をなくしてお困りである。誰か、針の行方を知っているものはおらぬか?」
すると、集まった魚の一匹が言った
「ここには赤鯛が来ておりませぬが、実は3年前から寝込んでいるのです。喉の奥に小骨が刺さって何も食べられないと、日に日に弱ってきております。
もしかしたら、その針がのどに刺さっているのではないでしょうか」
「うむ、ではすぐに、赤鯛をここに連れてこい」
海神はすぐに使いをやり、赤鯛を宮殿に連れてきた。
海神は赤鯛の喉の奥を探り、指を突っ込んで、小さなものを取り出した。それをきれいな水で洗い清めると・・・
針だ!・・・それは、確かに、あの時なくした針だった!
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☆鯛
縁起が良く高級魚として知られる鯛。5000年前の縄文時代の遺跡からも食べた後とみられる鯛の骨が見つかっており、昔から日本人にとってなじみ深い魚でありました。武家の社会となった鎌倉時代以降、見栄えが良いことから慶祝の場で盛んに用いられるようになりました。
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